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福井自動車株式会社

未来を見据えた自動車整備のデジタル化

集合写真
福井自動車株式会社は、半世紀以上に渡り自動車整備、販売を営んでいます。今回の取材をとおして、自動車整備業界の特徴として、IT化が他業種と比較すると遅れているというお話をお伺いしました。しかし同社は代表の土田さんが以前よりIT化に力を入れており、様々な情報を能動的にキャッチアップし、いずれ来る整備フローのデジタル化に備えていたとのこと。今回補助金を利用して整備システムを導入された経緯や効果、また今後の展望などについて詳しく伺いしました。

IT導入補助金を利用された経緯についてIT導入補助金活用のきっかけを教えてください。

土田さん:
自動車そのものがエレクトロニカルなものに変化しているため、整備側もそれに併行してついていく必要はあると以前から思っていたのですが、今回活用させていただいた直接的なきっかけは自動車整備における制度改正(※)への対応です。自動車整備業界を営むうえでは対応必須なものでした。実は、IT導入補助金を活用するのは今回が2回目で、2017年にも補助金を活用させていただきました。車検や整備のルールは国が作るため、それにあわせてシステムの更新をかけないと業務自体が滞ってしまいます。ちなみに、導入したシステムは、本来リース形式で月々お支払いするものですが、料金を一括で支払う形にすることで補助金が活用できるとご提案いただき、EBEさんのシステムの導入に踏み切りました。また、申請や­­­­­­­事後報告等の手続きは少し面倒な印象はありましたが、EBEさんより手厚いサポートをいただきました。
  • ※①電子保安適合証発行システム(AIRAS):国の指定整備工場で、車検時に従来紙で交付を行っていたが、「保適証サービス(AIRAS)」を通じて電子化が可能
  • ※②スマート継続OSSシステム:電子保適証作成と同時にOSS申請依頼情報を作成するなど利用者の業務効率化を追求したシステム
作業風景の写真

導入されたITツールについて導入されたツールを教えてください。

土田さん:
上記の通り『EBE整備システム』というシステムを導入しました。整備や検査の管理などに加え、顧客や自動車の整備履歴の管理などができるものになります。
 実は整備業界は全体的にIT化への対応が遅れている印象です。冒頭でもお話しましたが、車そのものがどんどん電子化していき、メカニカルなものからエレクトリカルなものに変わってきているのが現状です。それに併せて行政指導のもと、車検制度等もどんどんデジタル化しています。正直、その変化になかなかついていけていないですし、そもそもIT化やデジタル技術の情報があまり浸透していないことを業界の課題と懸念しています。
 当社では、もちろん制度変更に対応する目的でしたが、付随して業務の効率化もにらんで、EBEさんの整備システムを導入しました。
 整備システムは自動車整備業にとっては命綱ですから、継続的なユーザーサポートをいただいております。制度改正等で都度バージョンアップがあるのですが、その際は当社まで来ていただき、従業員向けにご説明いただいております。また経営におけるマネジメントや、DXなどの相談にも乗ってくれており、大変信頼しています。
ツールの写真

導入後の効果についてソフト導入後、何か変化はありましたか?

土田さん:
業務効率化、監査の簡素化、従業員のITリテラシー向上の3点ですね。
 業務効率化に関して、直接効果が実感できている訳ではないですが、業務の関節的な部分での効率化ができると考えています。車検証においては、今まで紙での差し替え作業を行っていましたが、IC車検証を使い、システムを活用してスムーズに自社で更新を行うことで受付対応の工数を削減することが可能になりました。
 2点目の監査の簡素化に関してですが、年に一度監査がいらっしゃいます。その際にチェックされる箇所について、これまでですと手書きでしたので、書き間違いのようなヒューマンエラーが心配でしたし、実際どうしても抜け漏れが発生してしまいます。電子化されることでミスがなくなり、余計な心配がなくなることで業務に集中し生産性向上につながると考えています。
 従業員のITリテラシー向上に関しては、そもそも従業員がデジタルツールに慣れてきました。今まではパソコンというワードを聞くだけで構えていたりしましたが、現在ではタブレット片手に業務を行うのが当たり前になりました。
 重要なのは、新システム導入のような変革をこなしつつ、ITスキルを上げていくことを計画的に行うことだと思います。昨今ではどの業界も人手不足や高齢化が進んでおり、IT化に関しては、リーダーが率先して意識改革を行わないと立ちいかなくなると考えています。
代表写真

今後の展望や期待今後、IT化やデジタルシフトを検討しているものがあれば教えてください。

土田さん:
車両の電子化や新しい安全装置への対応が課題と考えており、工場の設備投資を視野に段階的にデジタル化を進める方針です。まずは2024年10月より開始する、車載式故障診断装置(OBD)を使った車検に対応した取り組みですね。
 現在、多くの自動車のエンジンはコンピューターにより制御されています。OBDは、人の目には見えない不具合を検知する機能を期待されています。そのためには「法定スキャンツール」の導入や「DTC照会アプリ」のインストール等の機能拡充が必須です。また導入後にそれらを使いこなしていくというのが大きな課題と認識していますので、しっかりと取り組める環境が必要です。また、安全装置に不具合があった場合はエーミング※という校正作業も必要になりますが、その作業にもデジタルツールは必須です。整備におけるあらゆるフローで電子化対応していかないと、自動車整備自体ができなくなってしまいますのでこれからもデジタル化を進めていきます。
  • ※③衝突被害軽減ブレーキやドライバーの異常時に対応するシステムなど、電子制御装置が整備後も正常に作動するようにする校正作業